環境問題の解決に向けて、企業もそのコストの一部を負担しようとの流れから、CSR(企業の社会的責任)の一環としての取り組みがこの20年ほど活発になりました。
しかしその取り組みは本業と密接に関連する活動ではなく本業の業績が厳しくなれば打ち切りを余儀なくされるなど限界が見えています。
これに対し、CSVとは企業等の事業者が本業を通じて社会のニーズや問題に積極的に取り組むことで、経済的価値と社会的価値を創造するというアプローチです。私たちはこれまで積極的に企業のCSR活動と連携し、協働事業を実施してきました。しかし今後は、これを一歩進めて「CSV(共通価値の創造)」を含めた連携が必要だと考えています。
例えば、私たちは「森林を守り、木を切らずに紙を作ろう」というコンセプトで、サトウキビの搾りかす(バガス)を活用した非木材紙を企業や業界と一緒に開発・普及して来ました。
その売上の一部は、私たちの植樹や間伐等の森林保全活動の資金となっています。これはまさに「CSV」を実現した一例です。今後はこうした企業の本業と連携した取り組みをより一層強化し、広げて行きます。
CSV(Creating Shared Value / 共通価値の創造)
共通価値とは経済的価値を創造しながら、社会的ニーズに対応することで社会的価値も創造しようとするアプローチ。米国ハーバード大のマイケル・E・ポーター氏が提唱している。
環境問題の多くはその根本原因が人の営みによるものです。環境を守ることがその地域の事業者(林業、農家、漁師、工場、商店等)にとって利益になる、そういうWin-Winな関係が取り戻すべき社会のあり方だと思います。
経済と環境の両立は難しいと言われますが、本来産業は自然環境から得られる恵みにより成り立っています。
一次産業はまさに自然の恵みを直接的に得ています。二次産業はこれを加工することで、三次産業は加工した製品を流通させることで成り立っています。どの産業も自然環境が悪化すれば、どこかで不利益を被るのは自明の理です。
環境問題に取り組む活動がよりインパクトを持つためには、多様なセクターとの連携、協働が必要です。
とりわけ企業との連携においては、企業の本業とリンクさせ、社会事業的手法を創出することが重要だと考えます。
環境を守る活動が、企業等の事業者にとっても利益となるような共通価値の創造こそが持続可能な社会を創るためのKFS(成功の鍵)です。私たちは「森林」を中心的テーマに据えた環境保全活動を展開する上で、豊かな森林を守り育むことが社会にとっても企業等の事業者にとっても共有できる価値を産めるような取り組みを目指します。
森が健全であることは、豊かな水資源や河川を通じた海の豊かさにつながります。
この豊かな森と水の連鎖に恩恵を受けている地域の事業者にとっては、森の保全活動は自らの事業活動に貢献するものとなります。EFFでは、その地域の人の営み、林業家、農家、漁師、工場、商店など地域全体と深く関わり、森林保全を通じて地域全体の振興に寄与することもCSVとしての大事なアプローチだと考えています。
熱帯林の破壊や枯渇を食い止めるための一つの方策は、森林に食糧やエネルギーを依存している人々の営みに関わり、対象地域に森林と共生できる自立した小さな「経済」を作ることが大切だと考えます。
過度な焼き畑から持続可能な農業への転換や、森林を活かしたアグロフォレストリーの導入、生産物の加工・販売といった小さなビジネスの確立や太陽光や小水力など薪の代替エネルギーの導入など、森林を守り育みながら継続できる事業や生活基盤作りを支援することで、熱帯林の消失を少しでも食い止めることに寄与したいと思います。
そのために新興国や途上国におけるBOPビジネス※が森林や生態系の保全につながるよう積極的に関与・連携することも必要だと考えています。
※BOP(Base of the Pyramid )
世界の所得別人口構成の中で、最も収入が低い所得層を指す言葉で、約40億人がここに該当すると言われる。BOPビジネスは、市場規模が約5兆ドルにも上ると言われるこの層をターゲットとしたビジネスである。