インドネシア・カリマンタン島の現状
インドネシアは、約17,000もの島々からなる世界最大の島嶼国家です。その島の1つであるカリマンタン島(英語:ボルネオ島)は、グリーンランド、ニューギニア島に続き、島としては世界で3番目の大きさを誇っています。またインドネシア、マレーシア、ブルネイの3ヵ国が領有しており、島の南側半分がインドネシア領となっています。
カリマンタン島は、赤道直下に位置し、年間3,000mm前後の豊富な雨量により熱帯林が発達しています。そこには、オランウータン、マレーグマなどの固有の哺乳類をはじめ、希少な爬虫類や植物など、多種多様な生物が数多く生息しています。また、炭素の貯蔵庫とも言われる「熱帯泥炭湿地帯」※が広く分布しており『生物多様性保全』と『地球温暖化防止』、双方の観点から森林を保全することが非常に重要視されている場所です。
しかし、近年その豊かな森林は、森林火災や違法伐採を始め、私たちの生活とも関連深いパーム油の原料となるアブラヤシプランテーションの開発、紙パルプ製造のための伐採など様々な人為的要因によって消失し続けています。2005年~2010年の間に、カリマンタン島も含めたインドネシア全体で年間約69万ヘクタール※もの森林が減少しました。
これまでも政府、国内外のNGOも森林の保全・再生に向けた様々な取組みを実施していますが、その減少に歯止めをかけるべく更なる支援と対策が求められています。※FAO,2010,Global Forest Resources Assessment
※熱帯泥炭湿地
河川沿いや低地では、雨季に数10センチメートルから数メートルの深さで森林が冠水し、落ち葉や枝、幹などが水浸しの状態となります。このような状態では、土壌の微生物の活動が抑えられ、有機物は部分的に分解されて炭化し、土の塊のような状態・「泥炭」(木質ピート)となります。これらが数千年もの時間をかけ堆積した場所を熱帯泥炭湿地といい、膨大な炭素の貯蔵庫となっています。
インドネシアには、スマトラ島やカリマンタン島を中心に東南アジアの約83%を占める熱帯泥炭湿地帯がありますが、火災や森林の開発により切り開かれた泥炭湿地帯からは、年間5億トン※に上るCO2が排出されるといわれています。豊かな森林のあるインドネシアですが、このCO2排出量を含めるとアメリカ、中国に続き世界第3位の温室効果ガス排出国となってしまいます。
※The Global Peatland CO2 Picture Peatland status and drainage related emissions in all countries of the world(Wetland International)
EFFの取組み
EFFでは、企業とのコラボレーションなどにより、現地NGO が実施するプロジェクト支援を行い、インドネシアにおける熱帯林の再生活動に取組んでいます。
現在支援しているプロジェクト
中央カリマンタン州・ラマンドー自然保護区森林再生支援事業(2011・12年)
現地NGO・FNPFは2010年新たに同州スカマラ地区にある約56,000ヘクタールの低湿地帯「ラマンドー自然保護区」の熱帯林再生を目指す活動を開始しました。この地は、インドネシア環境省により保護されたオランウータンをリリースする場所に指定されていますが、違法伐採や度重なる森林火災により殆どの森林が消失する状況となっています。本活動は、わずかに点在する森をつなぐ「緑の回廊」をつくり、オランウータンをはじめとする野生生物の生息地を確保することで、生態系の保全に貢献することを目指す植林プロジェクトです。EFFでは2011年、2012年にこのプロジェクトを支援しました。
これまでに支援したプロジェクト
中央カリマンタン州・泥炭湿地林再生支援事業(2008年~2010年)
現地NGO・FNPFが実施している泥炭湿地の森林再生活動を2008年からの3年間TBSカンガルー募金を活用し支援しました。プランテーション開発による脅威も迫る中、本活動には苗畑づくりを指導したタンジュンハラパン村グループの協力が大きく寄与しており、その苗木の供給が植林活動を支えると共に村人自身の収入につながる良いサイクルができつつあります。
IAAF 世界陸上グリーンプロジェクト(2007~2008年)
「IAAF GREEN PROJECT」の委託により、2007年末から約1年間のプロジェクトとして減少の著しいインドネシアの熱帯林を再生するための緑化活動を実施しました。対象はカリマンタン島の大規模森林火災などで被害を受けて劣化した土地です。10万本の木を増やすことを目標に、現地で環境保護活動を続けている3つのNGO団体の主導の下に苗木作りと植林が行われました。
サポート
FNPF(Friends of National Parks Foundation)
1997年カリマンタン島に生息するオランウータンの保護を目的に設立。インドネシア・バリ島に本部を置き、中央カリマンタンの南海岸に面するタンジュンプティン国立公園内を活動拠点として、様々な自然保護プログラムを展開している。