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活動報告

中国内モンゴル

クブチ砂漠砂丘固定・緑化事業

砂漠写真

クブチ砂漠の概要

中国内蒙古自治区に位置するクブチ砂漠は、総面積約1万8千km2(1990年データ)の東西に長く伸びる砂砂漠です。北西の季節風により流砂は西から東へ移動し、農地や牧草地を飲み込み、住民に対し深刻な被害を与えています。クブチ砂漠は自然要因から形成される砂漠ですが、ここ数十年の過放牧や過開墾など人為的要因による急速な拡大が続いています。

活動予定地オルドス市昭君郷内クブチ砂漠周辺の状況

クブチ砂漠の中でも、この周辺は人為的要因により形成された砂丘郡が多く存在します。この砂丘郡には比較的地下水が豊富で、年間降水量も300ミリ前後と砂漠の中では恵まれた地域といえます。しかしながら、強い季節風により流動化した砂丘に直接植物を植えたとしても、種子や茎が傷つけられたり、根が露出もしくは地上部が埋没してしまい定着させるのは困難です。流動化してしまった砂丘内に植物を植えるためには固砂工事が必要不可欠で、その手法として最も有効かつ経済的な方法に『草方格』があげられます。いずれの植物を植えるにしても、この『草方格』により流砂を固定することが、この地域を緑化する上での最重要事項となります。

【草方格】

草方格は枯れ草(麦わら)などを地中に碁盤の目状(1m四方の格子状)に差し込んでいくことで、砂の移動をとめさせる技術です。枯れ草を並べる際、地面に簡単に線を引き、この線上に、その地に適した植物(できれば牧草となる植物)の種を播いていきます。その上に草を薄く並べ、草の中心をスコップなどで地面に挿し込んでいきます。この時、先に播いた種も同時に水分のある地中へと入っていきます。単純な作業ですが、この方法で非常に大きな砂防効果が得られます。

草方格を作る際、牧草を播種することも有効

草方格を作る際、牧草を播種することも有効

草方格は枯れ草や麦わらで簡単に作れる

草方格は枯れ草や麦わらで簡単に作れる

砂丘上部は草方格を作らず風で飛ばす

砂丘上部は草方格を作らず風で飛ばす

昭君郷の生活及び経済状況

昭君郷は、家畜の放牧と農業を中心とした農村地帯です。特にカシミヤヤギの放牧は盛んで、村のいたるところで放牧している姿を目にすることができます。しかし、放牧される家畜の数は年々増え、現在では自然の回復能力を大きく上回る数の家畜が放されています。この過放牧がクブチ砂漠拡大の最も大きな要因となっています。(※カシミヤヤギ過放牧の問題については地球緑化クラブのホームページをご覧ください)

家畜の放牧は、自然環境に恵まれないこの土地で簡単に収入を得ることができる産業として盛んに行われていますが、ヤギは植物の根まで餌とする動物で、植物が少なくなると根を食べ土地を枯らせてしまいます。そのため、この地域で必要とされるのは、放牧に頼らない新しい生活スタイルです。この地域の砂漠を有効に活用することができれば、この地域の経済的発展が見込め、同時に生活に深く結びついた緑化活動も可能となります。

村人・白(パク)さんの話

20 年前までは、このあたりは背丈まで草が生えていてとても良い放牧地だった。様子が変わったのは 90 年頃。忽然と現れた砂漠がだんだん目の前に迫ってきて、今では、村の南方 2km 先には、真っ白い砂丘山脈が横たわっている。
砂丘は風上の西から風下の東へ拡大していくのだが、放牧の影響で、北側に位置する村の方へも迫ってきた。そこで、村では日本のボランティア団体の協力で、 98 年から 3 年間ポプラの木を植えたが、砂丘の西側斜面に植えたポプラは、風で砂が飛ばされ根が剥き出しになってやがて枯れ、東側斜面では反対に砂がたまりポプラは埋もれてしまった。そしてとうとう 2000 年には地方政府によってカシミヤヤギや羊の放牧が禁止されてしまった。
その後「地球緑化クラブ」と一緒に、草方格による砂丘固定化工事を始めたところ、ワラと一緒に植えた植物が翌年にはいっせいに芽吹いた。それ以来毎年草方格作りを続け、少しずつ草原の回復に努めている。

砂丘上部は草方格を作らず風で飛ばす

モンゴル族のパクさん夫妻(2006年8月)

砂丘上部は草方格を作らず風で飛ばす

放牧が禁止されたカシミヤヤギ

EFFと地球緑化クラブ、村人との3者協働事業の開始・流動砂丘固定と植栽事業

砂漠写真
砂漠写真
砂漠写真

パルプの原料になる沙柳(サリュウ)

地球と未来の環境基金(EFF)では、地球緑化クラブの推進する草方格作りに賛同し、内モンゴルでの砂漠緑化活動を始めました。今年2006年、遊牧の村人と一緒に草方格を作り、沙漠を固定するとともに牧草地の回復を図るプロジェクトがスタートしています。

8月初旬~9月にかけて実施された草方格作りでは、村人6人がチームを組んで1日1,200㎡に作業を行い、約2ヶ月かけて6ヘクタールを完了しました。EFF代表・高橋も8月の1週間をこの地で過ごし、日本から訪れた4人とともに草方格作りに励みました。
草方格作りの作業は二人一組で行い、一人がワラを撒き、もう一人がスコップで打ち込みます。草方格には村人の収入につながる有用植物の種を蒔きました。「沙柳(サリュウ)」は2m以上に生長して紙パルプや工芸品の原料に、「沙棘(サージ)」はグミの仲間で実を換金することもでき、羊柴(ヤンツァイ)は牧草として利用できます。

ヤギや羊の放牧が禁止されて、現在、村にはほとんど仕事がありません。草方格作りは村人にとっても貴重な仕事です。草原ができたら、花や果実や種で村の特産品を開発して、放牧にたよらない村の産業を興すことにより、村の自立を目指します。広大な砂地に描かれた格子模様は遠くからもはっきりと見え、2、3年後にはそこは一面の花畑になる予定です。これら有用な樹種の植栽により、砂漠緑化に深く結びついた新しい産業が興り、自立した緑化活動が行われることが期待されます。

2006年度 砂漠砂丘固定緑化活動内容

砂漠写真

牧草として利用できる羊柴(ヤンツァイ)

面積
6ヘクタール
総額
50万円
内訳
材料費
14万円(麦わら)
作業費
28万円(6人の村人が1日60元(約900円)で50日働きます)
管理費
8万円