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活動報告

タイ

棚田づくりプロジェクト(2009年~2011年)

ナーン県はラオスと国境を接し、タイの水がめとも言える貴重なナーン川水源地に位置しています。1988年に一部地域がドーイプーカー国立公園に指定されて以降、同県のプーカー行政区内に点在する村々では、定住政策が徹底され伝統的な生活形態である移動耕作は禁止されました。そのため、輪作の周期が短くならざるを得ず、米の収穫が自給を満たさないほどに耕作地の地質が悪化し、森林を保全しながら水源や食料を確保することが死活問題となっていました。
そこで、これまでも植林などの活動を通して環境を保全してきた村の知恵者を中心に、焼畑陸稲から水田(棚田)稲作へと農法を変える取り組みを2009年から開始しました。当初、学校の農地から試験的に始めたこの活動は、統合農法の導入やチェックダムの設置等も併せて実施し、米の収穫量が焼畑の2~3倍になるなど着実な成果をあげ次々に拡大しました。
これにより、山岳地域のおける棚田の活動は、食糧・労働・環境における改善活動として行政、大学などから注目され、生態系保全と地球温暖化に寄与するという点でも期待が寄せられるようになっています。

ナーン県プア郡プーカー行政区3村(パンヤン村、ナムクワン村、ファイウィン村)
メージャリム郡ノンデーン行政区1村(キウナム村)の合計4村
当初プーカー行政区のみでしたが、3村での実績を踏まえ2010年から耕地の劣化や下流の村への土砂崩れの影響を与えるなど課題を抱えていたキウナム村へ導入を開始しました。

対象村:

2009年活動報告

  1. 地図づくりから始め、3村合計で2.16haの棚田を造成しました。
  2. 土木事業としては、チェックダム(小型の堰)5箇所、貯水池5箇所、山の中腹に大型・共同貯水池、貯水・養魚池4箇所を新設しました。
  3. 生態系保全型農業、増設や新設した貯水・養魚池に1万4千尾の養魚を放流し、堆肥床を製造、焼畑放置の土地に茶、コーヒーの苗木2万本を植林しました。
  4. 2009年12月に日本から農林業の専門家を派遣しました。3村からの村人、役所など98人が集まり、田んぼの注意点として蒸発防止、漏水防止、水源地保全のための植林方法を共に学ぶセミナーを行いました。
棚田づくりプロジェクト活動報告写真1

3村合同でイネの生育を調査する

棚田づくりプロジェクト活動報告写真2

村人と日本人技術者と一緒に作業

2010年活動報告

2011年3月までの実績
村名 棚田づくり ため池づくり 堆肥づくり
参加者
(人)
面積
(ha)
参加者
(人)
個数 参加者
(人)
パンヤン 36 11.4 21 34 36
ファイウィン 15 1.6 1 4 15
キムナム 6 1.3 4 4 6
ナムクワン 23 1.3 16 16 23
80 15.6 42 58 80

前年度の成果もあり、ナムクワン村の参加者は23人と4倍に増えました。また、新対象村のキウナム村では、1.3haの棚田を造成し、周囲に大規模池(10m×20m)と小規模池(2m×2m)を作り農業用水のインフラを整備しました。また、2011年3月に日本より有機農業の専門家を派遣して土着菌を用いた土作りトレーニングを実施し、化学肥料や農薬に頼らない環境保全型農法の技術移転を図りました。

棚田づくりプロジェクト活動報告写真3

収穫間近の棚田(パンヤン村2010年11月)

棚田づくりプロジェクト活動報告写真4

土着菌により土作りの指導(2011年3月)

2011年活動報告

水田稲作農業(棚田)づくりに加えて、水量の安定と食糧自給を向上させるため、養魚池や果樹栽培も含めた統合農法の導入を図りました。

1. 日本の有機農家を研修訪問

事業地で村人の指導にあたるNGOスタッフ3名を、鹿児島県の有機農家に研修のために派遣し、日本の棚田の管理技術や稲作農業を学ぶ機会をつくりました。また、2011年10月には鹿児島県農業推進局と農民との連携プロジェクトを視察し行政へのアプローチ手法を学びました。

2. 棚田の開発と統合農法の推進

棚田の造成と水源地保全、種籾の品種選定、棚田の水漏れ防止策などの技術トレーニングを実施しました。その結果、棚田メンバーは4村で100人になり、3年間では棚田面積は134ライ(21ha)、アグロフォレストリー(森の中の果樹園)は52ライ(8ha)になりました。

3. 森林保全とCO2吸収量の測定

ナムクワン村以外の3村を対象に、水田に転換することによって保全された森林のCO2吸収量をタイ国立農業大学研究機関の協力を得て測定しました。その結果、3村合計で焼畑を辞めた面積は1649.59ライ(263.93ha)1ライあたりのCO2吸収量は年間4トン(焼畑放棄地内にて、20×50m区画を紐で囲い一定以上の太さのある樹木の生長量を実測)、全体ではCO2吸収量は年間6,598トンとなりました。

棚田づくりプロジェクト活動報告写真5

稲干し馬を作る研修生(鹿児島県姶良市)

棚田づくりプロジェクト活動報告写真6

棚田造成、水を引く(ナーン県キウナム村)

棚田づくりプロジェクト活動報告写真7

チェックダム(堰)づくり

棚田づくりプロジェクト活動報告写真8

4村合同のセミナーの様子