中央カリマンタン州・泥炭湿地林再生支援事業(2008年~2010年)
インドネシア・バリ島に本部を置くNGO団体・FNPF(Friends of the National Parks Foundation)は、1997年にカリマンタン島に生息するオランウータンの保護を目的に設立された団体で、中央カリマンタンの南海岸に面するタンジュン・プティン国立公園内を活動拠点として様々な自然保護プログラムを展開しています。また、植林活動については2003年から開始し、2007年までの5年間に約150ヘクタール・10万本の苗木植林をした実績があります。
EFFでは2008年に受託したTBSカンガルー募金を3年に亘って分配することで、世界的にも注目されているインドネシアの泥炭湿地林破壊問題に取組む活動へ支援を開始しました。
2008年度は、タンジュン・プティン国立公園内の湿地帯ブグル地域の26ヘクタールに、メランティ、パプン、プライなどの湿地林構成樹種8,000本を、FNPFスタッフが地域の村人、ボランティア、学生らを動員し何日もかけて植林しました。また、ブグルの泥炭湿地林は、2006年に火災に遭い、焼け枯れた木がいつ倒れてくるかわからない危険な状況であったため、林内を避け、すでに草原化している地域に植林を実施しました。
2年目となる2009年は、同地域への植樹活動は昨年の夏にはほぼ終了に近づいていましたが、この年はカリマンタン各地で降雨量が極端に少なく、泥炭湿地からの自然発火や野火が8 月以降大きな火災に発展してしまいました。タンジュン・プティン国立公園でも9 月中頃から泥炭湿地の5 箇所から火災が発生し、タンジュンパラパンの村人や、ブグルの村人と2 週間以上消火活動にあたりましたが、それでも十分ではなく、さらにオランウータン・ファンデーションのメンバーにも呼びかけ、10月上旬にようやく火災を消し止めることができました。
今回火災で自然発火した地域は、北北東から約5 キロにわたるものと判明し、その中にはこれまでに植林した場所も含まれていたため、約4ヘクタールの植林を追加的に実施しました。この非常事態は、火災の重大さを再認識する出来事となり、消火活動でもウォーターポンプやホースが不足して、消火に手間取り、これらの備えを強化することも課題となりました。また、今回は火災地へ植林するための苗の購入をしましたが、今後はブグルやハラパン村のナーサリーで大きく育てた苗を近隣のパンカランブン市やクマイ町の人たちに売り、各地で緑化を進めてもらうことが計画されています。
最終年となる2010年、これまで2009年、2010年と2年間で80ヘクタールの泥炭湿地への原生種植林を実施しているFNPFの活動は、地球温暖化防止への関心が高い欧米の企業などからも注目され始めています。
オイルパームプランテーションの開発などで一時に数十万ha単位の湿地林が伐採されることを考えると、植林で補える面積は非常に小さいですが、この植林活動により現地固有の樹種が保全され、オランウータンなどの絶滅危惧種を含む生態系の保護が図られる効果は決して小さいものではありません。
また、彼らの活動には、近隣の村人の協力が大きく寄与していて、苗畑作りを指導したタンジュンハラパン村のグループによる苗木供給が、植林活動を支えています。植林サイトに隣接した苗畑では、今年は2万本以上の苗木が用意され、7km離れた村の苗畑に調達に行く労力を省くことができました。このグループによる苗木作りの活動はさらに活発になっており、村人自身の収入向上にもつながる良いサイクルをつくっています。
苗木づくりを始め自然を守ることで、経済的にも村人が豊かになるサイクルができれば、プランテーションによる開発やその他の違法伐採などを防ぐことにも繋がります。FNPFでは引き続き、熱帯林の再生とアグロフォレストリーなどの手法も導入しながら、人と自然がともに暮らしていける活動を推進しています。